脳の保護だけじゃない、認知症にも関係する脳脊髄液の働き

先日紹介したNewtonの別冊「老いの取扱説明書」に興味深い項目があります。
「睡眠は脳の老化を防ぐ。良い睡眠をとるための方法を知ろう」
ここでは脳脊髄液について解説してあります。脳脊髄液!?という方も多いのではないでしょうか。
体には3つの体液があります。血液・リンパ液・髄液です。最後の髄液が脳脊髄液のことです。

 

堀泰典先生の「体内静電気を抜けば病気は怖くない!」の中に

 

医学は静電気と脊髄液についてまったく理解していない。
という指摘があり、「脊髄液!?」と思い続けてきました。検索してブログ記事にまとめようと試みたのですが、詳しいことがなかなか見つからずに下書き状態でした。
「老いの取扱説明書」にその脳脊髄液についての記載があったので、久々に検索してみました。すると医学関係の専門サイトだけでなく、健康情報サイトなどでも取り上げる記事が増えており、次第に脳脊髄液の理解が深まっていることがわかりました。脳脊髄液について新たにわかった研究成果もあるようです。
「老いの取扱説明書」では、ごく簡潔に最新の情報が紹介されています。

脳脊髄液

脳脊髄液についてこれまで一般的に説明されてきたことは次のようなものです。

脳脊髄液とは

脳と脊髄は硬膜と呼ばれる袋の中にはいっており、髄液に満たされています。髄液は脳室(脳の中の空洞)でつくられ、脳内を循環して脳の表面にある「くも膜顆粒」で吸収されて静脈に入ります。

 

もの知りウサ君
下線部分は1960年代に報告されて古典的に認知されてきたことなんだけど
「解剖学的に不自然ではないか?」と疑問も指摘されてきたんだよね。
2000年前後からこれとは異なる
「脳に吸収され、脳に分布する毛細血管からも吸収される」
「リンパ管からも吸収される」
などの報告がでているんだよ。

脳脊髄液は脳から骨盤の骨である仙骨までを循環します。

 

 

脳脊髄液は1分間に6回から12回のリズムで生成や吸収を繰り返し、このリズムに合わせて頭蓋骨も動いています。1日当たり500mlほどつくられ、1日に3~4回入れ替わって常時150~180mlくらいで満たされて、一定の圧を保っていると言われています。

 

脳脊髄液の働き

■ 脳の保護

脳は柔らかいので硬い頭蓋骨に直接触れると傷がついてしまうため、脳内を液体で満たして脳が浮いた状態にして脳を保護しています。

もの知りウサ君
それって豆腐と同じだね。
脳脊髄液は背骨から仙骨へ循環しますが、脳と同じように脊髄も衝撃から守っています。
■ 脳・脊髄内の神経の新陳代謝

脳と脊髄の周りを循環しながら脊髄の中の自律神経に栄養与え、老廃物を排泄する新陳代謝を担っています。
最近の研究ではアルツハイマー型認知症の原因物質であるアミロイドβを洗い流す機能がわかりました。

「老いの取扱説明書」にこのことに関する記述があります。

 

脳脊髄液は脳内の空洞である「脳室」にある「脈絡叢」という機関でつくられ、「グリア細胞」が作る動脈周辺の空洞(動脈周囲腔)を伝って脳の細胞に入り込みます。そこから神経細胞周辺に流れ込んでアミロイドβを洗い流し静脈周辺の空洞(動脈周囲腔)から流れ出していきます。
昼間は脳内は神経細胞やグリア細胞で埋めつくされていますが、睡眠中はグリア細胞の一部が縮むことで隙間ができ、脳脊髄液の流れが良くなります。  

脳脊髄液と睡眠の関係

上の引用した内容は脳脊髄液の働きだけでなく、「脳内の空洞」が重要だと指摘しています。脳に空洞、隙間がないと脳脊髄液が流れにくい。その事によりアミロイドβなどの脳内の老廃物の排泄が滞り、老廃物が蓄積して脳の機能が衰えるんですね。
日中は空洞はないため、グリア細胞が縮んで空洞ができる睡眠が重要だ、と。

脳の疲労回復は睡眠によってしかなされません。
と、眠りの専門家がレクチャーしていますが、こういうことだったのですね。
(自律神経なども関連しています。)

脳脊髄液の異常による病気

脳脊髄液が異常に減少する、あるいは逆に増加することが原因で発症おきる病気があります。
■ 脳脊髄液漏出症(低髄液圧症候群・脳脊髄液減少症)

交通事故をはじめ、転倒やスポーツ外傷、体に強い衝撃を受けたこと等が原因で脳脊髄液が漏れだして減少し、脳の位置が通常より下がることにより症状が現れます。生成される量が少なくなるのではなく、脳脊髄液が持続的ないし断続的に漏出することによって起こるということが分かってきました。
起立性頭痛が典型的な症状で、めまい・耳鳴り・首の痛み・首の痛み・視力低下・全身倦怠感・うつなど。

 

■ 水頭症

何かしらの原因で脳脊髄液の流れが悪くなると、脳室内に髄液が停滞し、脳室が次第に拡大します。拡大した脳室が脳を圧迫することで様々な症状があらわれます。
原因として、髄液の生産過剰、髄液循環路の閉塞、髄液の吸収障害などがあり、多くの場合それらを引き起こす病気が存在します。

頭痛・嘔吐・意識障害などの症状

詳しくはこちら▶ 脳を保護する髄液が増加しさまざまな症状を招く正常圧水頭症とは(NHK)

 

 

脳脊髄液の流れをよくするには

3つの体液のうち血流が悪くなると様々な症状が起き病気になる、ということは皆さんよくご存知ですよね。
リンパ液についても、リンパマッサージなど一般的に知られています。が、髄液についてはまったく知らない人も多いでしよう。
脳内の流れには睡眠が重要とわかりましたが、脳から流れ出た脳脊髄液は髄液として脊髄の中を循環する流れと、静脈・リンパに流れ込んで体を巡る流れになります。
最も滞る箇所が首。首の筋肉がこると欠陥を圧迫するため血流が悪くなります。
脳脊髄液の流れをよくする情報を探しましたが、ネットにあるのはほぼほぼ整体やマッサージ、リラクシングなどのサービスを行っているサイトの記述です。ワタシ的にはこれらの情報は信頼していないのでご紹介するのはやめます。

オッチャン
そういゃあ、こういう記事もあったなぁ。
「首は絶対にもんではいけない」がベストセラーになった
脳神経外科医松井先生の記事。~週刊現代サイト
今すぐ「首」を揉むのをやめなさい!〜その「ひと揉み」が実は万病のもと
--------記事の骨子--------------------
松井医師(記事作成者)の独自の研究によれば、この自律神経のバランスを整える部位が、首の後ろから頭の付け根あたりに存在していて「私はこの部分を『副交感神経センター』と名付けました。・・・自律神経異常による各症状が同時多発的に出る。国際医療福祉大学熱海病院・神経内科医、永山正雄副院長によれば、血管と血流の観点からも、首を揉むことにはリスクがあるのだという。
「首を強く揉むことによって、頸動脈などの血管にこびりついているプラーク(血管のカス)や血栓が剥がれ落ち、血管が詰まって脳梗塞になる恐れがあります。プラークは年齢が高くなるに連れて生じやすいので、高齢者ほど危険です。最悪の場合、首への負荷によって血管の外壁に亀裂が入り、そこの部分に瘤が出来てしまい、クモ膜下出血につながる恐れもあるのです」【揉まずに首のコリをほぐすには揉まずにゆるめる】
長時間机に向かっているときなどに、15分に1回、30秒ほど手を添えて首を後ろにそらす。風呂にはいるときは首もしっかり温める。(首は冷やさず温める)【首の筋肉を鍛える】
手で頭に適度な力を加えて、それを頭で押し返す。(アイソメトリック鍛錬法)これを左右、前後の四方向で20秒ずつ行う。
この記事を読むと、直接首を揉むのではなく、首を温め、首を回したり、ストレッチしたりで筋肉を緩める。そして、首の筋肉を鍛えるのが良さそうです。
スマホ首の方は、意識して行うようにしたいですね。

脳の最新情報 (興味深い書籍)

脳脊髄にも触れているこの本、出版当時、専門書としては、かなり話題になって「講談社科学出版賞」を受賞しました。まだ通しで読んでいなかったのでアセアセでページをめくっています。(>_<)
内容(「BOOK」データベースより)
「人間らしさ」を生み出す、知られざる脳の正体。脳のはたらきは、ニューロンが担っている―この常識が覆されようとしている。脳の中には、知られざる「すきま」があり、そこを舞台に、様々な脳活動が繰り広げられていたのだ。細胞外スペースに流れる脳脊髄液、その中で拡散する神経修飾物質や細胞外電場、そして、脳細胞の半分を占めるグリア細胞。私たちの心や知性の源は、ここにあるかもしれない。「神経科学の王道」に挑む、新しい脳科学が誕生!

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