
久しぶりの「ハチミツ療法」記事です。臨床医の桑島やす子先生のレクチャーするハチミツ療法を聞きかじってw実践し始めてから3ヶ月になりました。
香川県の開業医・桑島靖子先生プロフィール
内科専門医でもあり、漢方専門医でもあります。 10年以上にわたる自分の慢性疲労がきっかけで、オーソモレキュラー栄養療法(分子整合栄養療法)と漢方を取り入れて 自分にも実践し、患者様にも取り組んできました。自身の更年期の慢性疲労にハチミツを使った栄養療法で克服し、治療に取り入れている。
引用元:チャンネル概要「ハチミツ療法の概要」がわかりやすい20分程の動画「ハチミツ療法実践動画」
始めてすぐに頻繁に起きていたフラつきが完全になくなり、これまでの食事は勘違いしていたことが多かったらしい、と気づきました。このやり方を続けてみよう、と思うことは他にもあれこれあります。半年経過に当たる九月頃にまとめようと思っています。
前回は糖類全般の代謝でしたが、「単糖(ブドウ糖・果糖)の代謝」についてまとめます。
- 糖類には単糖類・少糖類・多糖類がある。
- 炭水化物などの多糖類はブドウ糖に分解されるまで時間かかる。
- ブドウ糖になると血流に入り、インスリンの働きで細胞内に入る。
- インスリンはこれ以外に「血管内のブドウ糖量を一定に保つ働きがある。
ネットにはブドウ糖に関する情報は多いのですが、果糖についてはほんとに少なく、ほぼ無視されている印象です。しかし、ハチミツ療法では「果糖を活かす」ことがほかでは見ない視点なので「果糖の代謝」についてキッチリ理解したいと探し回りました。検索で気づいた問題は、専門分野でも最新の知識に更新していない情報がかなり多い。特に病院HPのコラム欄などはひどい。ワタシが混乱してきた理由もこれによると思いました。一番の問題と思ったのが単糖の吸収についてです。
消化により生じた単糖(グルコース・フルクトース)は、すぐに小腸粘膜上皮細胞から吸収され、数十秒後には血管に取り込まれる。
「糖質は肝臓経由で血管に入る。そのため糖分摂取は肝臓に負担がある。」というかつての通説は否定されたのですが、これを全く知らない”専門家”の記述が多いです。さらに「ブドウ糖のみが小腸で吸収され、果糖は肝臓に送られ中性脂肪として貯蔵される。」とする中途半端な情報もあります。
見つかったものは大半「果糖の摂取は注意が必要」という視点のもので、特に「糖尿病の低血糖時の摂取は危険」とするものが散見されます。(ちなみにハチミツ療法医の桑島先生は糖尿病患者にもハチミツ療法を行ってらっしゃるそうです。)
以上の経緯から、専門知識のない個人ブログでの通説と異なる記述は非常に難しいと思いました。そこで自分なりに最新の情報をメモしておく、というスタンスで続けます。この点、十分ご留意ください。
ブドウ糖・果糖の代謝
- 単糖(ブドウ糖・果糖)は小腸上皮細胞から吸収されてすぐに血流に入る。その後2、3時間で、一定の血糖値の範囲を維持し、余分なものは肝臓に移動する。
- 肝臓のブドウ糖は肝臓グリコーゲンとして貯蔵され、肝臓の働きを維持し、糖質しか利用できない脳のエネルギー源として使われる。寝ている間など摂食しない時間にも必要とされるエネルギーは肝臓グリコーゲンでまかなわれる。
肝臓グリコーゲンが一定の量に達すると残りは脂肪として蓄えられる。
*¹肝臓グリコーゲンは8時間ほどで使い切ってしまう。 - *²肝臓グリコーゲンの合成は一定量以上の果糖によって促進される。
- 果糖の多くは小腸上皮内で直ちにブドウ糖に変換される。
※果糖はすぐに肝臓に行って代謝されるというこれまでの通説は間違い。 - 果糖だけを摂取しても果糖の多くは小腸でブドウ糖に変わるため(空腹時の摂取で66%)ブドウ糖に変換された分で血糖値は上がる。
*²摂取した果糖の一部は血流に入る。(血糖値には関与しない)果糖は細胞膜の通過にインスリンを必要としない。 - 果糖の代謝のほとんどは小腸の細胞で行われており、小腸に存在する酵素ケトヘキソキナーゼ(KHK)によりリン酸化されて下流の経路に流れる。
この処理能力には限界があり、それを超えると肝臓に直接入って肝臓で代謝されるようになる。また、一部は腸内細菌で代謝される。これは腸管におけるフルクトース分解がフルクトース誘導性の肝臓脂肪生成を軽減することを示す。腸管クリアランス能を超えると脂肪生成が誘導される為、一度の果糖の過剰摂取が問題になる。 - *³腸の容量に合わせてゆっくりと果糖を摂取することで、こうした悪影響を軽減することができる。
※プリンストン大学の論文「The small intestine converts dietary fructose into glucose and organic acid(小腸は食品中の果糖をグルコースと有機酸に転換する)」 - 体内に入った果糖はブドウ糖よりも、速く代謝利用される。
上記*¹~*³の補足
*¹ 肝臓グリコーゲン量が60%位になると脂肪燃焼がはじまる。30%を下回ると筋肉グリコーゲンを使うようになる。(筋肉を維持するために注意が必要)
肝臓グリコーゲンの量は男性で75g女性で65g程。
食後2時間は蓄積モードでそれ以降、肝グリコーゲンは1時間におよそ15gづつ減り、食後4時間でおよそ30g減り、肝グリコーゲン量は60%になる。

ちゅうことはや、食後4時間くらいの、肝臓グリコーゲンが少なくなって脂肪燃焼が始まるタイミングに運動すれば脂肪が効果的に燃焼してくれる、ちゅうことか!?
*² 血糖値に関与せず、素早く血流に入りインスリンなしで細胞に入ることができる。この果糖の特性が体内を巡る糖分不足によるエネルギー産生低下に奏効する。
*² 肝臓グリコーゲンの生成を助ける果糖の働きにより、十分な肝臓グリコーゲンを蓄えることが期待できる。
*³ 果物やハチミツに含まれる果糖の量は問題なく、市販の加工食品、特に甘い飲み物に多く使われている合成された果糖、特に果糖ブドウ糖液糖が問題である。これらは急激に大量の果糖が入るため、腸管クリアランス能を超えてしまい脂肪生成が誘導される。
ワタシ的にはっきりと確信したことは*²の部分です。しょっちゅうふらつくようになって、どんどんひどくなるので加齢のせいか、と思っていました。特に夜中に何度も目が覚め、起き上がるたびに相当ひどくふらついていました。「空腹の時間を長く保ち、食間が長いほど体に負担が少ない」と思い込んでいたので、低血糖になっていたのでしょう。水にハチミツを溶かしたハチミツ水をチマチマ、ダラダラと飲むようにしたら、ハチミツの果糖がすぐに血液に入いるので見事にこれがなくなりました。夜間、目が覚めるのが好都合で、こまめに糖分を補給できるようになったので、その後どの時間帯でも全くふらついていません。

肝臓グリコーゲンがなくなって脂肪燃焼させてエネルギーを作るのにもエネルギーが必要なので、糖分が少ないとこのような代謝もうまくなされなくなります。ハチミツ水を時間を決めずにこまめに飲むようにするとエネルギー不足がなくなります。
最低限の生命維持だけでも毎分1~1.2kcalが必要とされるため、体内に貯蔵している糖質をすべて使い切るとしても、わずか7時間しかエネルギー補給ができません。この段階で糖質が補給されないと、血糖値は低下していきます。
引用元:https://www.kango-roo.com/learning/3692/
などなど、少しづつ理解が深まりました。ハチミツの利点は
- ブドウ糖と果糖が単糖として含まれるため、消化を必要としないことです。
果物にもブドウ糖、果糖が含まれますが消化を必要とします。 - ブドウ糖と果糖が含まれていること。
ブドウ糖と果糖の比率も肝臓グリコーゲンの生成に関係しているからです。含まれる*ブドウ糖と果糖の比率は蜂蜜にもよります。糖だけでなくミネラル、ポリフェノールなどの抗酸化物質も含まれています。

*固まりやすいハチミツはブドウ糖が多め。
草花の蜜よりも樹の花の蜜のほうが果糖が多め。
色が濃い蜂蜜はミネラル・ポリフェノール等が多め。
あれこれ探していて、国内の研究論文に素人にも納得出来た論文がありました。2007年広島大学の研究。これまでの通説を一蹴すると思いましたw
マラソンなどのアスリート界では、ここに書かれている「果糖が肝臓・筋肉グリコーゲンの合成を高める」ことに注目した摂食管理がなされています。いつどのように摂食するか、どのくらいの量か、など非常に細かくて運動生理学分野が「糖質とエネルギー生成」テーマの最先端をやっている、という印象を受けました。
本研究では果糖について、摂取量と活動とのエネルギー収支による体重調節と生体への影響を検討した。
果糖摂取は食事誘発性産熱の増大と血糖上昇の抑制およびインスリン分泌の低下などによって、体重増加や肥満の防止が認められた。
一方、果糖の摂取は肝臓グリコーゲンおよび筋肉グリコーゲンの合成を高めることを明らかにした。
従って、果糖は肝臓機能を高め、筋肉グリコーゲンを増大する栄養機能があると考えられる。今回の研究結果から、健康維持と生活習慣病予防には、果糖の摂取量を見直すことの大切さを浮き彫りにした。
↑論文、何故かリンクできない。
考察
本研究は実験動物のラットに同じ単糖類である果糖または、ブドウ糖を摂取エネルギー比の10%に 相当する量の実験食を与え、 摂食と活動のエネルギー収支による体重調節と生体への影響を検討した。
食物摂取による代謝亢進つまり食事誘発性熱産生において果糖はこの食事誘発性産熱を高めるた めにブドウ糖食群に比べ摂取量が多く、運動量が少なくても、体重増加が認められなかったと考えられる。 Schwarzらの実験も同じの結果が得られている。
摂食後の血糖と血中インスリンは果糖 食群とブドウ糖群に差がなく、 正常範囲内であった。むしろ果糖が血糖の安定維持ならびに適度な体 重維持に有用であると考えられる。
血中中性脂肪はブドウ糖食群より果糖食群の方が高い傾向を示し たが、これまで果糖の過剰摂取つまり50~60%では高脂血症が著しく認められたが、今回のように 果糖量は摂取エネルギー比の10%であるとブドウ糖と同じレベルであった。
果糖はブドウ糖と違ってインスリンによって肝臓での中性脂肪の合成能を高めると考えられる。今回と同じように果糖食群はブドウ糖食群より肝臓中性脂肪が高くなっているが正常範囲内であった。
肝臓グリコーゲンはブドウ糖食群に比べて、果糖食群は約2倍に有意に増加した。肝臓中性脂肪及び 肝臓グリコーゲンのいずれも、ブドウ糖食群よりも果糖食群のほうが多い傾向を示していることで、果糖は肝臓での代謝速度が速いため、エネルギー利用と蓄積されやすいと考えられる。
今までの結果 と同じく果糖は筋肉グリコーゲンを高めることが認められた。 従って果糖は筋肉グリコーゲンの回復を促進する可能性があると考えられる。
今回の研究成果から果糖の取りすぎを避け、つまり適切な量を取ると肥満や高脂血症などのリスクを減少させ、また肝臓機能を高め、筋肉グリコーゲンを増大する栄養機能を明らかにした。
今後は、 果糖の摂取量を見直し健康の維持だけではなく、 特に生活習慣病に対する予防と治療にも応用できる 「果糖と健康」を追究することは新しい臨床栄養学の方向性を与えるものである。
ちょっとまとまりに欠けますが、一旦、これでアップします。 今後、追記するかも知れません。
*******ハチミツ療法タグ記事”完”******
一応、「果糖摂取」に注意喚起している、真逆の視点もつけとこ(>_<)
果糖の過剰摂取により生じる可能性の高い問題
- 中性脂肪の増加(脂肪肝の一因)
- 尿酸値の上昇(痛風リスクの増加)
- 血中脂質のバランス悪化(高トリグリセリド血症など)
- インスリン抵抗性の上昇

果糖と言っても、ハチミツや果物に含まれる天然由来のものと、合成された果糖ブドウ糖液糖などとは違いがある。
その違いに言及したものは少ない。