草についた雨粒の写真
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テレビ東京の「家、ついて行ってイイですか?」では、街角で取材に応じてくれた人の家についていって、その方の暮らしや、これまでの人生を淡々と語らせる、という面白い趣向の番組です。
20人くらいのディレクターがそれぞれ、ビデオカメラひとつ抱えて取材してきます。
その中から使えるものを放送しているのですが、どのディレクターも良識があって、結構踏みこんだ質問も嫌味なく、相手の胸襟を開くのがうまい。
自然な流れで引き出した一般の方の暮らしや、それまでの紆余曲折を聞くと、皆さん、誠実に生きているんだなあ、と思うことが多いです。

そんな番組ですが、昨夜の回は言葉も出ない、切なくて重い方の人生を見せていただきました。
ネットでもかなりの話題になっているようです。

大宮駅で番組スタッフに声を掛けられた47歳の男性、バツイチでひとり暮らしの板前さんで、オヤジギャグを交えて軽やかな語り口の方でしたが・・・。
実は数年前に高校生の長女を交通事故で亡くしていらっしゃったのです。
80歳の高齢ドライバーがアクセルとブレーキを踏み違えて。刑事裁判では実刑判決で服役し、目下民事裁判中なのですが、加害者の老人は今年2月に亡くなってしまった。

ご覧になっていない方はこちらのライブドアニュースに詳細がうまくまとめて掲載されています。→ 「家、ついて行って」衝撃告白SPに反響続々

 

悔しくて無念で、納得できないのに納得するしかない、しかし、とても前に進めない・・・
とお話しされる様子が、ほんとにお気の毒で切なかったです。

私も、かなしみって消えないなぁ、と途方に暮れながら過ごしているのですが、人はそれと見えなくても、それぞれにかなしみを抱きながら生きているのか・・・と、切なくなり、美智子様が「でんでんむしのかなしみ」を取りあげられたエピソードを思い出しました。

 

「でんでんむしのかなしみ」は新美南吉さんの絵本です。私はこの方の本は切なくて苦手で内容を知りませんでしたが、3月にNHKで放送された「天皇 運命の物語」第4話「皇后 美智子さま」でどんな内容のお話しなのかを知りました。

美智子様の1998年にインドのニューデリーで開催されたIBBYの世界大会での(ビデオテープによる)基調講演で「読書の意義」についてお話しされたとき、「でんでんむしのかなしみ」を取りあげられていたのです。
*IBBYは国際児童図書評議会で国際アンデルセン賞を選定しています。
ちなみにこの講演の会場は、美智子様の話が進むにしたがって参加者の全てが感動して静まりかえり、終わった後、会場は異質な空間になっていた・・・と参加した方が述懐しています。

 

そのでんでん虫は,ある日突然,自分の背中の殻に,悲しみが一杯つまっていることに気付き,友達を訪(たず)ね,もう生きていけないのではないか,と自分の背負っている不幸を話します。友達のでんでん虫は,それはあなただけではない,私の背中の殻にも,悲しみは一杯つまっている,と答えます。小さなでんでん虫は,別の友達,又別の友達と訪ねて行き,同じことを話すのですが,どの友達からも返って来る答は同じでした。そして,でんでん虫はやっと,悲しみは誰でも持っているのだ,ということに気付きます。自分だけではないのだ。私は,私の悲しみをこらえていかなければならない。この話は,このでんでん虫が,もうなげくのをやめたところで終っています。----中略----そして最後にもう一つ,本への感謝をこめて付け加えます。読書は,人生の全てが,決して単純ではないことを教えてくれました。私たちは、複雑さに耐えて生きていかなければならないということ。人と人の関係においても、国と国との関係においても。
      引用元 宮内庁

 

「家、ついて行ってイイですか?」では、たまたま取材に応じてくれた男性が、高齢ドライバーの事故の被害者遺族だったので、ご遺族のかなしみにふれましたが、加害者とその家族にも深いかなしみがあるわけです。

死を目前にした歳で人を死に追いやってしまった、ということは重く辛いことですよね。それまでの人生に満足していたとしても、全ては吹っ飛んでしまう。経済的にも大変なことになりますし。本人はもちろん、家族も同じでしょう。

被害者側も加害者側も、当事者ではないのに、起きてしまったことによる影響は大きく重い。どんなに重い現実だろうか、と。
一瞬の出来事が引き起こしたことは、消えることも、薄まることもないですよね。

 

「でんでんむしのかなしみ」では、背負っている殻いっぱいにかなしみがある、と嘆いていたでんでん虫は、「かなしみを抱えているのは自分だけではない。」と知ったことでかなしみを抱えていることを嘆かなくなった・・・、という終わり方のようですが、かなしみを乗りこえたわけじゃない・・・

人はそれぞれの人生でさまざまなかなしみを抱くことになる、そして、人はそれぞれのかなしみを耐えて生きていかなくてはならない・・・
やるせない想いです。

ランの生け花

 

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