
最近、ネットでも呼吸の質こそが長生きやメンタルに深く関与している、という記事が増えてきたように思います。以前からトレーニングとしての「呼吸法」は数多く取りあげられていましたが、最近目立つのは「普通の呼吸」に関する記事です。食べることより「息すること」の方が重要だ、と警鐘を鳴らす専門家が増えているようです。
何も食べんと生きている人はおるらしい。本も出てるしな。
せやけど、息せんと生きてる人はおらんわなぁ。
これまでに、ヨガや気功をやったりして「呼吸法」についてはかなり学び実践し、ネットで調べたりしてきました。なんですが、どういう呼吸が良いのか、日常でどのように取り入れたら良いのか、等がすっきりせずにいました。
最近読んだ医者が教える正しい呼吸法(有田秀穂著)という本に
「呼吸法」というからには特殊な呼吸のことで、通常の呼吸のことではない。
と書かれてあり、これでこれまでスッキリ理解できなかった理由に気がつきました。
書籍、ネット情報の大半が「通常の呼吸」と「鍛錬の為の呼吸法」を区別しないで書かれているからです。また、自分でもその区別を意識していなかったからでした。
この記事では鍛錬などの意図的におこなう呼吸の仕方には触れず「意識せず普通に行っている呼吸」について書きます。
呼吸のキホン
呼吸のキホンについてですが、当たり前すぎて無視されているのか、ネットでは誤解しそうな記述が多いですよ。
呼吸は鼻でする
呼吸は鼻でします。
呼吸器官の始まりのが鼻です。口は消化器官の始まりです。
ちなみに口で呼吸できるのは人間だけです。
*正確な名前を失念しましたがヨガ経典に「鼻は呼吸するため、口は食べるため」といった意味のことが書かれています。
ヨガではどんな動作、ポーズでも鼻でしか呼吸しません。鼻から吐きだし、鼻から吸います。
ネットに多くあるヨガレクチャーで鼻から吸って口から吐く、などというのがやたらにありますが、あれは完全に間違いです。試してみるとすぐわかります。
鼻から吐き出し鼻から吸うことで動作のリズムがつながります。口から吐くと一連の流れが途切れます。
インド政府認定プロフェッショナルヨガインストラクターの資格を持つ片岡鶴太郎さんも「全てのヨガの呼吸は鼻で行う。」と書籍に書いています。
口から吐く、というヨガインストラクターはそれなりのレベル。ダイエット程度に習うにはいいでしょうが。
チベット体操でも口から吐く、とレクチャーしてる人が大半ですが、こちらも違いますね。やってみると気がつきます。鼻で吐き出す方がキツイ。身体的に効きます。
鼻で吸って口から吐く、と教えてもらったので、そうしていましたが、全部を鼻で呼吸してやってみると「一連の動作は実にスムーズなつながりになっている」とわかりました。
安静呼吸と努力呼吸
人の外呼吸は普通に意識することなくしている安静(時)呼吸と、激しい運動の後などに行われる努力呼吸があります。*この記事では安静(時)呼吸について取りあげています。
健常者における安静時呼吸は通常、横隔膜や外肋間筋などの呼吸筋の収縮と弛緩によってのみおこなわれる。その結果,胸腔内圧は,呼気終末を除き陰圧に保たれている。
これに対して努力呼吸とは「安静時呼吸では使用されない呼吸筋」を動員しておこなう呼吸をいう。努力呼吸では、吸気時には胸鎖乳突筋などの補助呼吸筋を用い、呼気時には内肋間筋や腹筋を活動させている。
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日常のほとんどは「安静時呼吸」で、無意識でおこなっている、いわば自律神経のはたらきによっておこなわれている静かで穏やかな呼吸です。しかし精神的ストレスや悪い姿勢などの様々な理由によって呼吸が乱れると、呼吸機能が低下し、脳に供給する酸素が不足しやすくなり、こうした脳機能の低下により、安静時であるのに、努力性呼吸でのみ使われる筋肉が安静時にも働くことで、脳と体は過緊張状態になり、肩こりや首の痛み、頭痛、また感情のコントロールがきかなくなるというような症状が現れやすくなります。
引用元 救急医学会医学用語解説
fa-thumbs-o-downネットにある呼吸に関する記事には間違いがかなりあります。ヨガインストラクター、トレーナーなど専門家のものでも怪しいものがけっこうあります。特に多い間違いは
- 普通にする呼吸を胸式呼吸という。
- 普通に鼻でする呼吸は胸式呼吸です。
- 腹式呼吸は横隔膜を使い、胸式呼吸では横隔膜は使わない。
胸式呼吸でも横隔膜を使っており、普通の呼吸は胸式呼吸と腹式呼吸のどちらもやっています。
これを確認するのに数日かかりました(^^ゞ そのくらい疑問にされることなく一般的に言われている”通説”になっているのですね。
ちなみに「呼吸の仕組み」で一番納得できたサイト(上智大情報理工学科 荒井研究室)を文末にリンク貼ります。
普通の呼吸(安静呼吸)の仕組み
肺は自ら動く機能がなく、呼吸筋により胸腔が収縮・弛緩すると、肺はスポンジのように膨らんだりしぼんだりします。
呼吸筋のなかでもっとも大きな働きをになうのが横隔膜です。ここでは他の呼吸筋は省いて、横隔膜の動きと呼気・吸気の仕組みを取りあげます。
横隔膜は生ハムくらいの厚さの筋肉で、力を入れない状態では上向きに膨らんだドーム状になっています。力を入れるとドーム状に弛緩していた状態が、収縮して平らになります。
アドビストックにわかりやすい動画がありました。
吸気では胸郭が膨らみ、横隔膜は収縮して肺に空気が入ります。呼気では胸郭の膨らみがなくなり横隔膜は弛緩してもとのドーム状になっています。
片時も息を止めることは出来ませんが、筋肉の働きから見ると、筋肉を緊張させる動きから緊張を解いた状態、つまり(息を吐き出しきったとき)がデフォルトに相当します。なので、(普通の呼吸においては)息を吐く時より息を吸う時に筋肉が動いています。
これは、筋肉を充分に動かせないと充分に空気を吸い込めない、ということを意味します。
腹式呼吸では横隔膜にちからを入れて息を吐ききる、とされていますが、横隔膜に力を入れて緊張させるとドーム状に上方に緩んでいた膜が平たくなり、胸腔が拡がります。(上のイラスト参照)
息を吐くときは筋肉に力を入れる必要はないのです。筋肉の力を抜くと息も抜けていきます。
ため息(嘆息)するとわかります。(筋肉の)力が抜けてるでしょう。
ヨガなどの呼吸法で「吐く方を意識して息を吐ききれば、意識しなくても充分な吸気が出来る。」という解説があります。中には「‘ 呼吸‘ と言うのだから ‘ 呼=吐く‘ のが先だ。」という珍説もあります。
私は、これは真逆だと思うのです。
呼吸筋は吸うときに緊張収縮して肺を開かせます。それで空気が入ってきます。次に筋肉が緊張を解くと、肺はもとの押される状態にもどって空気が押し出されます。
肺の膨らむのと筋肉の動きが逆なので、感覚的に肺が縮んでいるときに筋肉が緊張しているように感じますが逆です。なので、吐くときではなく、筋肉が緊張する吸気を意識する方が合理的だと思うのです。
意識して充分に吸い込む。呼気は入った分以上は吐き出せないのですから、意識して吐き出そうとしなくても、余った分は吐き出されるのです。吸うのが先。普通の呼吸では十分に空気を取りこむことが重要なのです。
※補足
これに対し、「呼気を意識する」と副交感神経が優位になり、気持ちを落ち着かせられる。この気持ちを落ち着かせる目的の場合、呼気を意識する、というのは理に適っています。こちらに書いています。
よい呼吸とは
普通の呼吸では、吸う為に筋肉を使うので、筋肉の衰えは吸う能力が落ちることになります。多くの空気を吸えず酸素の供給が減弱します。又、呼吸筋は空気を吸い込むだけでなく、それ自体では動けない臓器を刺激して血流を促す働きもあります。
呼吸に関わる筋肉(呼吸筋)を充分に使えないと、それを補うために呼吸筋以外の筋肉を使って呼吸するようになります。例えば肩の筋肉。肩で息をする、という表現がありますが、肩で息をするときは緊急時ですよね。
緊急時ではないのに、これを解除出来ずに、通常の呼吸でも肩の筋肉を使っていると肩こりや頭痛になります。
理想的な呼吸とは具体的にはどんな呼吸なのか? 上で引用した 日本救急医学会医学用語解説では次の様に書かれています。
そして、その時々の姿勢や動きを助けてくれる適切な呼吸が無意識に行える状態であることです。
肩こりや頭痛などの原因になるんだよね。
緊張なく充分な酸素が供給され、更には意識することなく、その時に見合った適切な呼吸に切り替えられる、というのが理想の呼吸のようです。まずは「意識せず普通に行っている呼吸=安静時呼吸」の質を高めることが非常に有意義である、と思います。
意識せずにする呼吸の質が高いと、取りこむ酸素量だけでなく、呼吸筋の維持・訓練でもあり、それが臓器への刺激にもなる。
「質の高い食事」より「質の高い呼吸」が肝腎なのであります。
呼吸の仕組みについて散々捜して、こちらの動画でようやく理解できました。
▶ ▶ ▶ 上智大学 理工学部 情報理工学科 荒井研究室
質の高い呼吸のためにすぐできることをこの記事の文末で書いています。ポイントは
- 「日常の呼吸(意識せずに行っている呼吸)」はどのような筋肉の動きで行われているかを実感する。つぎに
- その筋肉のしなやかさを取り戻し、維持するためのストレッチを行う。
*なかなか記事をまとめられないのでとりあえずの内容です。暫時追加していくつもりです。
ようやく書きました。