
随分前になりますが「どうも呼吸が浅くなっているなぁ。」と気付きました。有酸素運動が苦手なので肺活量は少なかったのですが、それにしてもごく浅い息になっています。
瞑想の前に準備段階として呼吸法をしていたのですが、長く続けているうちに呼吸法をしなくなっています。その影響?あるいはあれこれ悲しみを抱えて肺が弱ったか。(陰陽五行では「悲-肺」)
*ここでの五臓は解剖学的臓腑ではなく漢方の概念です。
怒りすぎると陽気が昇り、肝が弱って風気を受けやすくなる。風を受けると手足の力がぬけ、めまいをおこす。
喜びすぎると陽気が浮き上がり、心が弱って暑気を受けやすくなる。暑を受けると身体内に熱がこもり、腫物ができる。
憂いすぎると胃の陽気が働かなくなる。陽気が不足すると胃に湿気(水分)が多くなる。湿気が多くなると下痢をする。
悲しみすぎると肺が弱り、燥気を受けやすくなる。燥気は体液を欠乏さす。便秘やカラ咳をしだす。
恐れすぎると腎気が働かなくなり、下半身に陽気が少なくなる。下半身に陽気が不足すると寒気を受けやすくなる。寒気を受けると腰以下が冷えだす。
引用:初めて読む人のための素問ハンドブック(池田政著)
呼吸が浅い=取りこむ酸素が少ない▶ ▶ ▶体力減退 ですから、きっちり呼吸について勉強してすぐに手を打たなくては、と検索。呼吸に関する記事がとても増えていて、ハッとさせられたのが「食べるより息する方が重要」という指摘。
なるほど!それはそうですね。「息するってなかなか深い」ことがわかりました。
感情と呼吸
最近の研究で呼吸と感情には深い関係があり、呼吸のたびに不安が増す仕組みになっていることがわかりました。

人間は呼吸をするたびに、脳の「扁桃体」というところで不安や恐怖などのネガティブな感情を認識しています。そのため深い呼吸をすることで呼吸のペースを落とせば、脳が不安を感じる回数を減らすことができ、ネガティブな感情を軽減することができます。

形がアーモンドに似ているからこの名前が付いたんだよね。
扁桃体は1㎝くらいの小さな組織で神経細胞のかたまりで脳の左右にあります。
扁桃体の役割は、海馬からの視覚や味覚などの記憶情報をまとめて、それが快か不快か(好き嫌い)を判断し、その情報を海馬へと送ることです。
不安や恐怖を感じると呼吸が速くなりますね。サイコものの鉄板演技です。
しかし、これは感情が呼吸に影響を及ぼすのではなく、逆に呼吸が感情に影響しているんですって。
呼吸が感情を左右している事がわかった。呼吸回数が多いほど、不安やネガティブな感情が起きる回数が増え、それを増大させるそうです。
*呼吸回数が多い=浅い呼吸で1回に取り込める空気が少ないから回数が増える。
これ、すごい!
「不安を一掃する方法」が見つかったも同然じゃないですか。感情を変えるのは大変なことですが、呼吸回数を少なくするのは簡単に出来そうですもん。

私的には深い呼吸ではなく「ゆっくりした呼吸」とすべきだと思います。
深い呼吸だと深呼吸につながってしまいます。
あくまで呼吸回数が問題なので、ここは「ゆっくり」と表現するのが分かりやすいと思います。
「一定のゆっくりしたリズムの呼吸は、ヒトの心の動きを支配している、大脳辺縁系の扁桃(へんとう)体と呼ばれる場所に働きかける」と本間教授。
「扁桃体には呼吸のリズムをつかさどる部位もあり、ゆったりとした呼吸と心の動きが同調し、落ち着かせてくれる」仕組みだ。 引用:日経電子版
余談ですが、著書「心と体をラクにする呼吸スイッチ健康法―「浅くて速い呼吸」を「深くてよい呼吸」に変えるコツ20」
呼吸と自律神経
リラックス時に副交感神経が優位になると、呼吸がゆっくりになると思っている人がいますが、逆。
呼吸がゆっくりになる=つまり呼吸数が少なくなると、副交感神経が優位になります。
つまり、呼吸のリズムが自律神経を左右するんです。
「呼吸の仕方」で自律神経のバランスを整えることができる
呼吸の仕方で脳波がどう変化するか調べると、交感神経は息を吸った時に活性化し、副交感神経は息を吐いた時に活性化するそうです。
呼吸でリラックスする方法では
●吐く方を意識する。とか
●吐くのと吸うバランスを1:2にする。
などと吐く方を長くするように解説してありますが、その根拠はこういうことなんですね。

胸腔にある圧受容体に圧がかかって静脈に流れる血流量が増える。
それで副交感神経の活性が高まるんじゃよ。
吸う空気が多いと吐き出す量も増えるから、自ずと吐くのも長くなるんじゃよ。
呼吸と疲労
スタンフォード大学スポーツ医局アソシエイトディレクターの山田知生さんも「スタンフォード式疲れない体」で呼吸と疲労について触れています。
呼吸数が多いということは呼吸は浅く、自律神経が集中している横隔膜を充分に動かしていません。これだと夜になっても副交感神経が優位にならず良い睡眠が得られません。
この引用部分だけでも刮目に値すると思います。横隔膜と自律神経は深いつながりがあります。上の引用にあるように、横隔膜には自律神経が集中しているので、横隔膜がしっかり動くと自律神経が充分に機能し、休息(睡眠)時に自律神経のバランスが変化して、副交感神経にスムースに切り替わります。つまり良い睡眠につながります。
起きているときの呼吸を正せば自律神経が整って、睡眠の質が高くなる。結果として疲労が取れる。
ということですね。
この本では従来の腹式呼吸の間違いを指摘して「IAP呼吸法」という呼吸法を薦めています。「IAP呼吸法」は意図的呼吸なのでこの記事では取りあげませんが、「IAP」は良い呼吸を知る上でヒントになるので少し触れておきます。
IAP(腹圧)について
IAPは腹圧を意味するIntra Abdominal Pressureの略です。
腹圧を「腹筋を緊張させ体の奥向きに力を加え、お腹を凹ませる」と誤解されやすいのですが、違います。まったく逆なんです。
Intra Abdominal Pressureは腹腔内の圧のことで、腹筋群を始めとする他の筋肉に外向きに力がかかっている状態のことです。赤ちゃんの膨らんだお腹が理想的な腹圧なのだそうです。
山田さんは「腹式呼吸で腹筋に力を入れて腹をへこませて息を吐ききる、というのは間違いだ。」と指摘しています。
腹圧が高いときは風船のように外向きに力が入っている。腹をへこませようとすると真逆の方向、内向きに圧をかけて腹圧が減弱してしまう。そこが間違いだ。といっているんですね。
腹圧が高いことのメリットは体幹が安定します。
「IAP呼吸法」をとりいれたアスリートが格段に記録を伸ばせた、というのは体幹がしっかりしてぶれず、四肢の動きが良くなったからだそうです。

「丹田呼吸法」「丹田強化法」と同じではないかと思います。
武道・能、日舞、太鼓などでの「下腹に力を入れる」のと同じですね。
呼吸とリンパ
タイミング良く「美と若さの新常識 カラダのヒミツ」でリンパと横隔膜の関連を解説していました。
横隔膜をしっかり使った呼吸をすると、横隔膜が動くたびにリンパ液を貯めている「乳び槽」を押すので、リンパ液の流れが良くなるそうです。
番組ではリンパ液の滞りを解消すると浮腫が消え、ぽっこりお腹も引っ込む、といってました。
*横隔膜がしっかり動く呼吸が前提です。
欲張ってあれこれ取りあげたのでいささか散漫になってしまいましたが、呼吸筋の代表格、横隔膜がしっかり動くと、
- 通常の呼吸で1回の呼気で多くの空気が吸い込める。
- その為、呼吸数が減り、呼吸のたびに不安になる機会を減らすことが出来、感情的に安定する。
- 横隔膜の動きで周辺臓器を刺激して、血流が良くなり臓器の働きが活発になる。
- 横隔膜が自律神経を活発にして、副交感神経との切り替えがスムーズになりよい睡眠になる。
- 横隔膜がリンパの流れを良くする。
などの良いことがあるようです。その為に横隔膜を鍛える気になりますよね。しかし、その前にやること、やれることがありますよ。
横隔膜以外の呼吸筋を充分に使うようにすると、それにともなって横隔膜も動きが良くなります。そうなってから横隔膜を鍛えるとより効果的に鍛えることが出来ます。別のいい方をすると、他の呼吸筋の動きが悪い状態では横隔膜を意識することもままならない・・・と言えます。
呼吸筋を充分に動かすために
肺自体は動かないので、肋骨と横隔膜が肺を押したり緩めたりすることで空気を吸い込んだり吐き出したりしています。
この動きに関わる筋肉群を呼吸筋と言います。これらの筋肉がしなやかに動かなくなると、肺を押し出す力が減弱して、吸い込む空気が少なくなる、つまり呼吸が浅くなります。
なので、呼吸筋を鍛える前に、まずはしなやかさを復活させるのが先です。肋骨を取り巻いている筋肉をストレッチします。
この時、力を入れる必要はなく、呼吸が乱れない程度で筋肉を意識するだけでOKです。力を入れると呼吸が乱れます。呼吸が大きくなるのは普通では使わない筋肉が動員されるからです。これが常態化すると、本来頑張るべき筋肉は怠けるようになって逆効果になります。なので、普通の呼吸を維持しつつやることが前提です。
この段階での目的は、普通に呼吸するときにどんな筋肉が動いているかを認識して、その筋肉をストレッチすることです。呼吸ではなく筋肉に注目します。
*やり方の説明に適した画像を捜しているのですが、なかなか見つかりません。間違いでは!?と思うものも多いのです。
こちらの説明が見つかりました。出典:安城更生病院
Aの動きの時、両手を組まないでやってみると意識できるのは背中の筋肉ですが、両手を組むと胸の脇の筋肉も意識されます。私は組まずにやっています。
A、Bの動きは収縮する筋肉と伸ばされる筋肉が交互になっている事がわかると思います。
自分で吸う・吐くでの動きのときに、どの筋肉が動いているか、吸うときと吐くときの違いはどうか?などを意識します。(眺めています。)
伸ばされる側の反対が収縮してその姿勢を保っているので、伸ばされる側、収縮している側のどちらも眺めます。
私はこの動きに加えて
- 両手を上に上げて肋骨まわりの筋肉を上に引き上げる。
深呼吸にならないように、呼吸に合わせて(腕は上げたまま維持)筋肉を少し引き上げるだけにとどめます。 - 腕を上げた状態で、吸う時に片側に倒す。吐きながら元に戻す。(腕は上げたまま)
左右を1回づつ交互にやると勢いが付いて息が乱れやすくなりますから、右に10回、左に10回とやるのがコツ。左右同じ回数にして、回数自体は適当です。 - 腕を上げた状態で少し体をひねり、吸うときに軽く後ろに反る。吐きながら元に戻る。
等をやっています。
2の動きに近い動作の解説動画が見つかりました。ここでは「胸郭ストレッチ」となっていますが、確かにこの方が呼吸を意識しなくていいですね。動作が呼吸ごとの動きでないのも良いと思います。また、解説もなかなか的を射てよい動画だと思います。
肋骨まわりの筋肉が意識できるようになったら、横隔膜の動きを探ってみてください。特に意識しなくても横隔膜が動いているとわかると思います。横隔膜の動きが少しづつ大きくなるようにするのが次の目標になります。
横隔膜については只今勉強中です。
確認作業などが多くて1ヶ月以上かかりました。もしも「?」と思われる箇所があればコメントでご指摘いただければ幸いです。
呼吸の仕組みがわかるとより理解しやすくなるので、こちらの記事も参考にして下さい。