セロトニンは、「しあわせホルモン」とも言われるように精神の安定や睡眠に関係する神経伝達物質です。セロトニンが不足すると、ウツ傾向が強くなるので、心身の安定のために積極的に生成するようにしたいものです。私は年季の入ったウツ持なので、これまでセロトニンについていろいろ勉強しました。セロトニンについて最新の情報をおさらいしつつまとめます。
目次
セロトニンとは
セロトニンの解説はメディアでも多いのでよくご存知と思いますが、一般に言われてることでちょっと勘違いしているような事もあるのでおさらいしておきます。
※ネタ元は大半、セロトニン研究の第一人者、有田 秀穂先生の著書です。
セロトニンはどこで作られる?
腸で作られて血流によって脳に運ばれます。
このような解説が一般的ですが、正確にはすこし違うようです。
セロトニンは体内で作られるのは間違いないのですが、腸だけでなく脳でも作られます。
又、肝腎なことは、それぞれの場所でセロトニンの働きが異なることです。
気分の安定や睡眠に関わる働きのあるセロトニンは主に脳で作られたセロトニンです。
「セロトニン神経」を活性化することが重要なんです。
セロトニン神経のセロトニン生成
脳のセロトニンはセロトニン神経が出しており、その他の脳神経に対してもセロトニンの生成を促す働きがあります。
セロトニン神経は交感神経と副交感神経のバランスを整えることにも関わっています。
セロトニン神経の働きは覚醒時の交感神経の過剰な興奮を抑え、自律神経のバランスを整えたり、痛みを感じたときある程度抑制して脳に伝えたりします。
セロトニン神経は寝ている間はセロトニンを分泌せず、覚醒時だけ分泌します。
[自身では楽器を演奏しないが、演奏者全員のハーモニーをつくっている。」と。
即ち、直接働きかける物質を分泌することはないが、脳全体の調和を取りつつ関与する各脳神経の活動を促すわけです。分かりやすい例えですね。
セロトニンは何で作られている?
セロトニンはアミノ酸の一種であるトリプトファンという栄養素から合成されます。トリプトファンは体内で生成されないので食べ物から取り入れる必要があります。
トリプトファンは腸から吸収されて、血液の中を循環し、腸や脳などでトリプトファン水酸化酵素という酵素をもった細胞によってセロトニンが合成されます。
トリプトファンだけでなく、ビタミンB6、マグネシウム、ナイアシンを含む食品もセロトニン生成に関わります。
多くの食材に含まれており、余程の偏食でなければ、摂取をとくに意識をする必要はありません。逆にサプリなどで、トリプトファンを過剰に摂取すると、発熱や痙攣など副作用が出る可能性があります。
セロトニンの働き
そら初耳や。
- 腸でのセロトニンの働き
腸のセロトニンは主に腸の内容物を肛門まで運ぶ「ぜんどう運動」を促します。 - 血液中のセロトニンの働き
出血すると血小板からセロトニンが放出され、筋組織の血管平滑筋が収縮します。これで出血量が減り止血されます。 - 脳でのセロトニンの働き
以下に詳しく・・・
脳でのセロトニンの働き
セロトニンは脳の広範囲に放出されています。オーケストラの指揮者に例えられるように、直接的にではなく、関連する神経、部位に活動を促すのがセロトニンの働きです。
ストレスの処理
感情や記憶を司る大脳辺縁系にセロトニンが伝達されると、不安や恐怖感が抑えられ、精神が落ち着いたり、痛みが和らいだりします。
大脳辺縁系は過度なストレスに影響されると、悲観的な気持ちになったり、衝動的になってしまったりすることがあります。セロトニン神経が活性化してセロトニンの分泌が増えると、大脳辺縁系の活動が安定し、適度にリラックスした平常状態になります。
覚醒作用
睡眠中はセロトニンの分泌はありませんが、朝が近づくにつれて徐々に分泌され、太陽の光が網膜に入るとセロトニンの分泌が活性化します。すると、血圧や呼吸、心拍が活動的になるので、目が覚めて意識がはっきりしてきます。
■よい睡眠にも関係している
セロトニンは直接睡眠に関わってはいませんが、セロトニンは入眠ホルモンと言われるメラトニンの材料です。したがってセロトニンが少ないとメラトニンが少なくなり眠りにくくなります。
姿勢・表情がよくなる
セロトニンは運動神経を刺激し、抗重力筋の緊張が高まります。
抗重力筋は立つ姿勢を保つための筋肉で、首筋や背骨の周囲、下肢の筋肉、まぶたや顔の筋肉などです。これらが刺激され、姿勢が良くなります。(シャンとします)
表情にもハリがでます♪
痛みを和らげる
セロトニンは大脳皮質に痛みを伝達する痛覚伝導路を抑制する働きがあります。脳内でセロトニンが分泌されている間は痛みが緩和されます。
セロトニンが不足したら・・・
以上のセロトニンの作用から考えられる「セロトニン不足」の症状はどのようなものでしょうか?
オーケストラの指揮者の例えから考えると分かりやすいですね。心身共にバランスを取るのが上手く出来なくなるんですね。
特にストレスを処理する大脳皮質が過剰に働き、ストレス反応が大きくなります。すると、感情のブレが大きくなって精神が不安定になります。
又、体調面でも疲れやすくなり、眠りの質も落ち、姿勢も悪くなる・・・。
こういう状態が長くが続くとウツ傾向が強まり、体調も悪くなる・・・という負のスパイラルに陥ります。
こうなるととにかくセロトニンを増やさなくてはなりません。日常生活習慣で簡単にできる方法をまとめます。
セロトニンを増やす生活習慣
太陽光
セロトニンの分泌を促すには日光浴、太陽光を浴びる、というのがよく知られています。
1日に30分くらい、太陽の光を浴びるようにしましょう。
セロトニンを増やすには、2500~3000ルクスの照度のある光が必要で、なので、蛍光灯などの明るさでは不十分です。光が網膜に入ると脳に伝わり、セロトニンが生成されます。
直接の太陽光は50000ルクス~100000ルクスで強すぎるくらいです。この場合は時間を短く。又、直接太陽を見るのは危険ですし、その必要はありません。日陰や、太陽光の差し込んだ明るい部屋でも効果があります。
リズム運動
同じ動きを繰り返し行う単純な「リズム運動」も、脳のセロトニン神経を刺激します。一定のリズムで筋肉の緊張と弛緩を繰り返すときにセロトニンが放出されやすいといわれています。
ただ、漫然と繰り返すのではダメで、意識して行う必要があります。
単純な動きとは例えば次の様なものがあります。
- ウォーキング
音楽を聴いたりせず、右、左と出す足に意識を向けて歩く。 - 咀嚼 (私は歯科医院専用ガム、ポスカエフ愛用です)
- 呼吸 (ちなみに有田先生は丹田呼吸法をおすすめしています。)
- 読経、歌唱も。
グルーミング
グルーミングとは皮膚感覚のコミュニケーションのことです。
セロトニンが出て痛みを感じなくなる・・・
って事だよね。
エステのマッサージや愉しいおしゃべりも脳科学的にはグルーミングに含まれるそうです。
感情を動かす
感動の涙を流した時には、自律神経のリセットと同時にセロトニン活性が起こり、浄化作用があるそうです。様々な人と触れ合うことで、心が動く経験をすることや、映画や小説など芸術に触れることも効果的でしょう。
ちょっとしたことでセロトニンが増えるんですね。
あと、面白いのはセロトニン神経が活性化するための習慣を続けると、セロトニン神経の構造そのものが変わって、セロトニン神経の分泌の多い脳に変わってくれるのだそうです。
※詳しくはこちらの記事を読んでください。
セロトニンを増やすために。脳におけるセロトニン神経を活性化させるには